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真空発生器のデジタル機能により、ロボットハンドリングシステムの予知保全を実現
Piabは、インダストリー4.0機能をサポートするため主力製品である「piCOMPACT®真空エジェクター」シリーズをアップグレードしました。IO-Linkでデバイス間を接続させ、センサーを追加して重要なプロセス情報を収集し、それらを分析することにより、スマートで安全な真空処理を実現します。機械の稼働時間と寿命の向上、メンテナンスプロセスの高速化、コストの削減。これらを目指すために、開発時にキーとなっていたのが予知保全を可能にすることでした。
一般的に予知保全とは、運転中の機器のパフォーマンスと状態を監視するものであると定義されます。これは、単に効率性と信頼性に優れ、コンパクトな真空エジェクターを提供するだけでは、もはや不十分であることを意味します。自動車のプレスショップなどにおける、一般的なピックアンドプレース用途向けのサクションカップ、フォームグリッパーなどといったロボットグリップシステムの真空源となる真空エジェクターは、グリップユニットとロボット間の相互接続機構として機能し、スムーズなシステムを確保するために、これら両モジュールを監視する助けとなります。そのため、主力製品をデジタル化するにあたり、Piab R&Dチームは、お客様の競争力を高めるために予知保全の要件をサポートすることに重点を置きました。piCOMPACT®23 SMARTエジェクターは、最先端の技術を組み入れ、システムを可能な限り最大限に稼働させます。
IO-Linkを介して他のデバイスおよびクラウドとの通信が可能になりました。IO-Link は、センサーやアクチュエーターに搭載された現行の技術をさらに発展させた、フィールドバスに依存しない規格です。IO-Link は、パラメータの設定を自動化し、稼働中であっても様々な機能のパラメータを読み書きできます。リアルタイムで幅広いプロセスの概要を把握できることで、多くの潜在的な問題について、実際に影響が出る前から対処できるようになります。システムを診断する機会が得られ、問題を見つけ出し、問題をより簡単かつ迅速に特定および修正できます。これにより、生産性を大幅に向上させることにもつながります。この診断機能を支えているのは、従来の技術にはなかったIO-Linkのデータストレージ機能です。この機能により、例えば夜間に発生したデバイスや動作の異常の原因を突き止めることができるようになります。デバイスの故障や交換の必要性から、単なる接続ミスに至るまで、幅広くトラブルの原因を特定することができます。また、新しい、同一の交換用装置が接続されている場合、以前の装置のパラメータは自動的に新しい装置に転送されるため、設置時間の短縮につながります。
ビッグデータ分析には、分析してシステムの最適化に使用できる情報を生成するための様々な特性について測定が必要とされます。センサーを配置することによって、生産性の向上とダウンタイムの削減に役立つ情報の収集を可能にし、状態の監視と予知保全が促進されます。センサーが複数配置されることで、真空エジェクターの特性を測定し、エジェクターの異常やシステムのリークなど潜在的なトラブルを検出することが可能となります。ユーザーはトリガーポイントを設定できます。データがこのようなトリガーポイントを逸脱すると、メンテナンスがすぐに必要であることが分かります。これにより、部品の交換などの準備をすることで、予期せぬ生産ラインの停止を未然に防ぐことができます。
そのため、PiabのR&Dチームは、piCOMPACT®23 SMARTに、システムの温度、システム電圧、加速度、サイクルカウンター、システム自己診断機能などの測定をサポートする複数の診断センサーを直接装備することにしました。これらの測定値に変化があれば、ロボットセルまたはプラントのどこかで問題が発生しているかもしれません。piCOMPACT®23 SMARTは、オートメーションシステム全体の監視、および接続された機器または周辺機器のトラブル防止を支援します。さらに、エジェクター自体の動作状況に関しても理解を深めることができます。
センサーは実際の動作温度を表示するため、迅速に情報を得ることができます。もし温度範囲を逸脱していれば、エジェクター周辺の環境に問題があることを示します。このように迅速に情報を得られることで、エジェクターの長寿命化、動作の最適化に繋がります。さらに、警告信号の検出が簡易化されることで、温度上昇の原因となる他のシステムデバイスの問題も発見できる可能性が高まります。電圧センサーは電源入力を制御し、動作状態を判断します。この機能は、低電力によるシステムの損傷を回避し、システム全体の寿命を延ばすためにユーザーをサポートする目的で追加されました。低電圧を検知すると、警告が示されます。
真空ベースのロボットグリップシステムの予知保全において重要なパラメータのひとつが、システムが清潔に保たれているかどうかです。特に、使用していくうちに真空フィルターが汚れる多塵環境でのアプリケーションでは、真空圧の低下が起こり、プロセスが遅くなったり、誤った信号が発生するようになったりします。これを監視するために、piCOMPACT®23 SMARTには、Free-running Vacuum Level(FVL)と呼ばれる真空圧低下を確認する機能があります。FVLが初期よりもドリフトし始めているならば、システムのFresh Free-running Vacuum Level (FFVL)が詰まり始めていることが分かります。真空システムのリーク(チューブ、サクションカップ、フィッティングなどに損傷がある場合にリークが発生します)を確認する別の方法は、特定の真空度に達するまでの時間を追跡することです。piCOMPACT®23 SMARTには、First Time To Hit(FTTH)という機能があります。この機能は、Fresh Free-running Vacuum Level (FFVL)から一定の真空度に到達するまでの最速の排気時間を測定します。後のサイクルで同じ真空度に到達するまでに排気時間が長くなっている場合、Time To Hit(TTH)として監視および記録されます。このような場合、システムにはおそらくリークが発生しており、修理が必要な状態です。
オートメーション化や大きく重い部品の取り扱いに取り組んでいる自動車産業に目を向けると、機械の稼働中や保守において、操作の安全性が重要な役割を果たします。このことから、アクチュエーターとセンサー用に別々の電源領域を設けるように開発されました。このようなシステムでは、ロボットセルの保守またはトラブルシューティングのためにアクチュエーターの電源を切ったまま、作業員がセンサー電源を個別に起動できるため、回路のショートが起こった場合など、作業員が可動部品によって危険にさらされることがなくなります。また、電源領域を個別にすると、バルブステーションを分けずにコンパクトなスタイルのエジェクターを使用できるという利点があります。これにより、高価な回避策やコンパクトなエジェクターに追加するモジュールが必要なくなり、取り付けにかかるコストが削減されます。
2つ目の安全機能として、相補ビットまたはPDO(process data output:プロセスデータ出力)が開発されました。通常の真空またはブロー信号に加え、真空またはブローをアクティブにするためにこれを有効にする必要があります。また、プログラムの残りの部分がまだ完全に実行されておらず、通信が行われていない場合、危険な状況を作り出す「速すぎる」バキューム信号を回避します。
予知保全を可能にするpiCOMPACT®23 SMARTは、システムのパフォーマンスに影響を与える様々な環境条件を監視し、真空システム自体だけでなく、オートメーションシステム全体の機械の稼働時間を向上します。